『ニジェールのドクタータニ 外科医 谷垣雄三物語 』

『ニジェールのドクタータニ 外科医 谷垣雄三物語 』が出版されました。

2022年5月頃から、店頭に並ぶことになります。

ここに本の紹介をさせていただきます。

発行日:2022年5月20日

著 者:川本 晴夫

発行所:株式会社 国際開発ジャーナル社

発売所:丸善出版株式会社


紹介文:安城 (広報)

 私が青年海外協力隊の調整員として家族とニジェールに赴任したのは1986年12月、その時谷垣夫妻は既にニアメで5年目を迎えていました。住まいが近かったこともあり、赴任中は「雄ちゃん」「静ちゃん」と呼び合うお二人との、近所付き合いが続き、我々の帰国後、谷垣夫妻がテッサワに移られてからも静子さんは私の妻に手紙を下さいました。ただその筆跡が変化し、線の弱々しくなっていくのをみながら、切なくも感じていました。それにしてもお二人の、精神の強さと人間に対する隔たりない思いはお見事というほかありません。

  本書の著者である川本晴夫さんは本会の会長であり、谷垣雄三さんとはワンダーフォーゲル部で行動を共にした信州大学同期の仲間でした。学部が異なる川本さんは卒業後新聞記者の道に進みましたが、青春時代に山を共に歩いた谷垣さんの行動とその後の生き方に強いインパクトを受けたに違いありません。川本さんは記者の経験を活かして、谷垣さんに関係した方々へのインタビューと谷垣さんの遺品等を元に、この物語を作り上げました。 

 本書の中では、山と人への想いで結ばれていた「波里美知(はりみち)会」、故郷からの支援だけでなく現地にも行かれた峰山町の人々、そしてテッサワの感謝の掲示板に記された大勢の方々の想いとドラマが、ジグソーパズルのように組み立てられて、一片しか見えていなかった我々にその全容を見せてくれました。ドキュメンタリーでありながら、ニジェールに住んだことのある私にとっても想像を超える「物語」です。

 2017年に谷垣さんが亡くなった時、JICAのニジェール支所長は山形茂生さんでした。このことにも運命的なものを感じます。多くの国際協力に携わり、谷垣さんの活動を心から評価した方で、アフリカにも深い思いを抱く彼であったからこそ、谷垣さんの成果と遺産をアフリカのために役立て、そして多くの人にも知って欲しいと考えての行動をとったに違いありません。そして山形さんは遺品の中から静子さんのフランス文化センターでの個展のビデオを見つけ、これを手掛かりに撮影者である私に連絡をくれました。静子さんに差し上げたビデオテープと再会することにもなり驚きました。 山形さんから、会の設立と活動の内容を知らされて、そのためのボランティアをやらせていただきましたが、出版に向けた校正では幾度も読み返しているのに、同じ箇所で目頭が熱くなり、感動の波がおし寄せるのを止めることができませんでした。ニジェールの首都から遠く離れたテッサワで奥様と共に生き、その地に並んで永眠されているお二人の物語は奇跡の「ドラマ」です。そして本書からは、谷垣さんにお会いした人の多くが抱いた疑問「何が彼をそうさせているのか?」について、本書を読みながら私はその答えを見出したように思います。本書の中には人としての生き様と愛、そしてアフリカ、ニジェールの現状と国際協力のあり方や評価について等、多くの課題と気づきを読者に投げかけていると思います。

 当会では谷垣雄三医師の活動を紹介する企画展等を実施していますが、SDGsの観点から、谷垣さんは実践の中で持続性、文化配慮を重視するとともに、その1要素のユニバーサルヘルス・カバレッジ(UHC)や、その一環として外科分野で提唱されているグローバル・サージャリーの先駆者だったと、あらためて気づかされました。国際開発、アフリカ、医療の関係者のみならず、人の生き様と愛の物語として、多くの方々に本書を読んでいただきたいとお勧めします。



ニジェールの外科医と静子さん

ニジェールのテッサワにて、外科医として生きた谷垣さん、 そして彼の苦難を包み込み、しなやかな視点と感性で、 目の前の情景を描き続けた静子さん。 ここでは二人の生き方と描かれた絵の数々を紹介します。 #アフリカ, #ニジェール, #テッサワ, #谷垣雄三, #谷垣静子, #外科医, #画家, #砂漠

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